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核融合|ダイバータ関連|PSB法
異種金属接合技術(粉末固相接合法 PSB法)を活用した核融合炉用受熱機器
開発の背景
核融合炉を構成する機器の中には、高い耐熱性能と除熱性能の両立が求められており、タングステン(元素記号:W)と銅(元素記号:Cu)の接合体が検討されています。
耐熱·耐摩耗性は、高硬度·高融点金属であるタングステンが担い、除熱·電気伝導はタングステンよりも熱伝導性が高く電気抵抗の低い銅が担います。
従来手法の課題
これまでタングステンと銅の接合には、異種金属接合の標準的な手法である「ロウ付け」が用いられてきました。
しかし、このロウ付けでタングステンと銅を接合すると、以下のような問題点がありました。
欠陥が発生しやすく、
接合強度が弱くなる
接合過程で生じる酸化物の生成に
起因する接合不良が発生しやすい
タングステンと銅の熱膨張の違い
(熱による変形の度合いの違い)により、
接合面に亀裂が発生しやすい
新技術の開発:PSB法
プラズマを利用した新しい異種金属接合技術である粉末固相接合法:Powder Solid Bonding: PSB法を開発しました(特許第6563581号)。この新技術により、従来のロウ付け法を用いた場合の問題点を解決し、高品質なタングステンと銅の接合に成功しました。
本技術のポイントは、以下の3点です。
- 接合する材料どうしを強い力で押し付けながら、大電流を流します。すると材料間の僅かな隙間にプラズマが生じ、材料の内部で部分的に溶けてくっつきます。
- 接合不良の原因となるタングステンの酸化を防ぐため、強い抗酸化作用のある水素を用いて酸化物の生成を抑制します。
- タングステンと銅の熱膨張の違いを緩和するため、タングステンと銅の混合粉末を用いた中間層を設けることで、接合後の歪みを抑制します。
このような工夫を用いることで、接合面の近傍に生じる欠陥を極めて少なくするとともに、亀裂の発生と接合後の歪みを効果的に抑制して、タングステンと銅の高強度で高品質の接合に成功しました。
今後の展開
核融合実験環境下での耐久試験が予定されています。
また本技術は核融合研究のほか、同様の技術を必要とする電気自動車、送電設備、鉄道車両や建設重機等の大型機器から、非金属材料を用いる小型·精密機器まで、幅広い産業分野への貢献が期待されます。
開発事例
大型ヘリカル装置(LHD)真空容器用保護板
当社は、核融合科学研究所殿の協力を得て、大型ヘリカル装置の真空容器用保護板を製作し納入しております。保護板は、使用される箇所により微妙に形状が異なっており高度な加工技術が要求されます。
「大型ヘリカル装置(LHD)真空容器用保護板」の使用例
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LHDで使用される耐熱タイル
真空容器壁の熱負荷が高い箇所は、耐熱性の高いモリブデン製のタイルで覆われています。
これらのタイルは同じくモリブデン製のボルトで固定され、裏側の水冷チャンネルを用いて常時冷却されます。
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大型ヘリカル装置(LHD)内部の様子
プラズマが生成される真空容器内壁は約7000枚の耐熱タイルで保護されています。
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