東邦金属株式会社

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放射線遮蔽関連

放射線遮蔽関連
実用金属中最高クラスの19.3g/cm3の密度を誇るタングステンの極細ワイヤーを、一般的な生地にも使われるニット編みにより、金属繊維生地の製造に成功しました。
この生地を縫製することで、放射線遮蔽服、医療用途など様々な展開が期待されます。

W繊維を用いた放射線遮蔽材の開発(従来のWワイヤとは別分野への取組)

概要

2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故以降、国内における放射線防護に対する意識は年々強くなってきています。

この事態に際し、スウェーデン語で「重い石」を意味するタングステンを用いた事業を行う当社は、タングステンの大きな特徴の1つである実用金属中トップクラスの密度(19.3g/cm3·金と同等)を放射線遮蔽用途として使用を画策し、直径0.05mm以下のタングステン極細線(ワイヤー)を用いたタングステンの生地(以下Wニット)を開発しました。

Wニット開発と同時に放射線遮蔽性能の評価を展開し、2012年より国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学未来材料·システム研究所(熊谷純准教授)と共同研究を開始し、同校コバルト60ガンマ線照射室で製品評価を重ねています。

課題

Wニットだけに限らず、広く展開するべく下記の課題もあります。

  1. 縫製技術の構築·外部協力
  2. 販路の拡大

タングステンが持つ高い特性を有した繊維構造物ですので、放射線遮蔽に限らず、幅広い分野での展開を図ります。

タングステンニット

タングステンニット

タングステンニット拡大写真

タングステンニット拡大写真

取組み 放射線遮蔽服

Wニットの安定した生産をするべく、ニット編みに強い北陸地方の企業と技術協力をし、高品質なWニットの製造法を構築しています。

また、Wニット100%(外生地除く)の放射線遮蔽服を、縫製を専門とする企業と協力し、顧客のニーズに応じた設計を実施。特に、福島第一原発事故の除染作業用として、作業内容に応じた改良·オプションを付属し、満足度の高い放射線遮蔽服の納品を実施しています。

タングステンニットを用いた放射線遮蔽服

タングステンニットを用いた放射線遮蔽服

プロトタイプ

プロトタイプ

プロトタイプ

ベストタイプ初期型
軽量+作業性重視

プロトタイプ

ベストタイプ 最新版 THB-002
遮蔽面積増加+重量感低減改良


放射線遮蔽服 変遷

用途・要望に応じて常に進化し続けています

取組み タングステンフレキシブルシート

Wニットを複数積層圧着させた、タングステンフレキシブルシートを開発(以下WFS)しました。

空隙があるので、純粋なタングステン板より密度は劣りますが、放射線遮蔽材料として広く使われる鉛(密度11.34g/cm3)を超える、約12g/cm3の密度を持ちながら、写真の様にしなやかさも有するシート材料となっています。

タングステンフレキシブルシート

タングステンフレキシブルシート

今後

Wニット、WFSの基本アイテムを軸とし、放射線遮蔽服だけに留まらず、医療関係や工業部材など幅広い分野への応用製品の拡販を展開していきます。

同時に名古屋大学での性能評価も随時行っており、アップデートを繰り返しながら製品の特性を精査していきます。

(複数の特許取得済)

開発事例

  • タングステン製放射線遮蔽生地の開発

    東邦金属の技術で滑らかな繊維状に加工したタングステンを、繊維メーカーの協力により編み織られた、「タングステン製放射線遮蔽生地」は、既存の遮蔽体と同等の遮蔽能力を有し、かつ、軽量で柔軟性が高く、原子力発電所における防護服や、医療分野における新たな遮蔽材としての展開が期待されています。

    「タングステン製放射線遮蔽生地」の特徴

    • タングステン製放射線遮蔽生地の開発

      実験では、γ線遮蔽率10.7%という値が得られました。生地の多層化や、タングステン板(0.1mm)等との組み合わせにより、25%以上の遮蔽も可能です。

      生地にすることにより、軽量で柔軟性の高い、新たな遮蔽体としての開発に成功しました。人体に装着する防護服等にこの遮蔽生地を用いた場合、 今までの重く扱いにくい遮蔽体に比べ、作業者への負担を大きく軽減することが可能です。

      更なる遮蔽率向上に向けて日々実験を進めており、早期の実用化を目指してまいります。

      ※遮蔽率は、名古屋大学内コバルト60γ線照射施設にて測定しています。

  • フレキシブルタングステンシートの開発

    タングステン100%でありながら、ゴムシートのような柔軟性を有し、自由に折り曲げたり包み込んだりできるシートの開発に成功しました。変形性の自由度が高い為、一般的なタングステン板では実現が困難であった領域への可能性を秘めており、今までの既成概念を打ち破る新しい用途に期待されています。

    「フレキシブルタングステンシート」の特徴

    • フレキシブルタングステンシートの開発

      特徴

      • 100%タングステン製
      • 変形性の自由度が高い
      • 密度は12g/cm3(鉛は11.3g/cm3
      • 耐食性は一般的なタングステン板と同等

      放射線遮蔽性能

      • 鉛と同等以上の密度であるので、鉛以上の放射線遮蔽性能を有する

      可能性のある用途

      • 高温炉内の遮熱材 又は 補強材
      • 高温雰囲気における焼成用の敷材(トレイ)
      • 立体形状体に貼り付ける放熱材(変形性+タングステンの高い熱伝導度)
      • 爆発物の飛散防止用カーテン
      • 放射線遮蔽用マット(場所を問わず敷ける)
      • タングステン製放射線遮蔽生地との組合せ
  • 「フレキシブルタングステンシート」の放射線遮蔽性能

    タングステン100%でありながら、ゴムシートのような柔軟性を有し、自由に折り曲げたり包み込んだりできるシートの開発に成功しました。変形性の自由度が高い為、一般的なタングステン板では実現が困難であった領域への可能性を秘めており、今までの既成概念を打ち破る新しい用途に期待されています。

    「フレキシブルタングステンシート」の特徴

    • 「フレキシブルタングステンシート」の放射線遮蔽性能

      フレキシブルタングステンシートのX線遮蔽性能

      フレキシブルタングステンシートは、密度12(g/cm³)と鉛の密度である11.3(g/cm³)を上回るように設計されておりますので、鉛と同等の遮蔽性能であるならば、より薄くすることが可能となります。
      また、鉛のような鉛害に留意する必要も無く、環境に対しても配慮された製品と言えます。

      X線遮蔽性能

      • 1枚約0.35mmのフレキシブルタングステンシートについて、左グラフの通り、鉛以上の遮蔽性能を有しています

      ※1枚で約90%、2枚以上で約98%の遮蔽性能。
      ※放射線遮蔽性能測定においては、JIS Z 4501に準じて、透過X線量の測定により鉛当量を求めた。(管電圧:100kVのX線を照射)

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